善良なドクロ
平次は部活の帰り道、路上の隅のほうでうずくまってた同年代の少年を助けたのが縁で、不良グループの事件に関与した。 助けた少年はパツキンで耳には五月蝿いほどのピアス、ついでに鼻の穴にまでそれはくっついていて、 見るからにヤンキーだった。 歩いていたら急にイカツイ顔のおっさんたちに袋叩きにされたという。 少年が所属している不良グループとそのおっさん達の間でイザコザがあったそうだが、どうも聞いている限り おっさん達のほうが非がある。 片方だけの意見では偏りが出るので、ちゃんと調べた上での判断だ。 警察を出すのは少年が嫌がった。 そこで平次は「ちょっとした」罠を貼って、勝手におっさん達が自滅して警察に捕まるような手筈をした。 関西では名の知れた高校生探偵。 勿論作戦は成功した。 物々しい雰囲気でイカツイ男達がパトカーに連行されるのを、物陰から見物した平次と少年は帰路に着く。 ほんの一週間くらいの付き合いだが、この少年と平次は気が合った。 方やヤンキー、方や良いとこのボンボン。 アンバランスさが、逆に互いの話を補って盛り上がる。 平次は少年から、リアルな今の不良少年達の現状を聞く。 喧嘩、ドラッグ、売春、エトセトラ。 その少年はドラッグ等はやってないそうだが、周りの友達ではそれなりにいるらしい。 存在は知っていても、こうやってその現場にいる人間から聞くと新鮮で衝撃的だ。 彼らがやっていることは悪いことだ。六法を読めば、犯罪にあたる。 それでもその少年や一連の事件で話をした不良グループ達がが悪いやつには思えなくて、平次は正直に言った。 お前たちのような存在を理解しきれないことが悔しいと。 すると少年は笑って言った。 「理解されたらこっちが困る」 更にわからなくなり、平次はまゆをひそめる。 何となく、理解されないからどんどん不良に走るのだというイメージがあったのだが。 「あんたのような優等生がいるから俺らは遊べるんや。全員が遊んでたら、きっとセカイは回らへんで」 それってもしかして、優等生が不良の分も負ってセカイ回してることにならないかと言えば、少年はそらそうやと返す。 ずるいやっちゃなあと言いつつ、平次は苦笑する。 しかし少年の言っていることは理解できた。 その数日後。金はもらわん主義だとつっぱねた平次の下に、少年からドクロマークの入ったTシャツが贈られた。 今まで自分が着た事の無い部類の柄だ。 母は眉をひそめたが、平次はそのシャツに腕を通す。 そうして、真面目に明日の宿題に取り掛かる。 きっと、少年が望むことはそういうことだろうと平次は思った。