白雪に刺さりし薄紅の欠片
隣で「彼」がしゃがんで何かを見ている。 何か犯人の証拠でもあったのだろうか。 真剣な顔つきで地面の一点を穴が空くほど睨んでいる。 小雪がちらつく都会の道路。 事件現場となったそこにはテープが張り巡らされ関係者以外は立ち入り禁止だ。 そこにさも当然のように入り、入らされ、彼は推理する。 彼女は側で立つだけ。 屈んだ背中を見つめた。 「なあ、ここにこの破片があるっていうのはやっぱりおかしいよな?」 「……そうね。破片の大元はもっと向こうにあるもの」 凍える空気に、吐き出した息が白く見えた。 「だよな」 こちらを見ずに、それでも後ろに居ることを確信しながら彼が問う。 そしてこちらも望まれてる言葉を確信して答える。 信じた背中は、あまりにも親しくあまりにも近く。 そして、あまりにも遠く。 幼馴染の背中。 探偵の背中。 工藤新一の背中。 でも でも 「よし、わかったぞ。蘭、ちょっと警部のところ行ってくるよ」 その振り返った顔に、思いもかけぬ記憶が重なった。 ――蘭ちゃん、いっしょに行こか 白雪が薄紅色に染まっていくのを、彼女は止める術を持たなかった。 いや、術があったとしても止めただろうか?