「まあ、僕のように第三者的立場で言わせてもらうとするならば」 カチャ、とカップをソーサに置く。 「別に君達は悪いことをしているわけじゃない。むしろ自然の流れだ。 事実だけを捉えるならばそういうことになる」 テーブル越しの平次は黙っていたが、目が納得していなかった。 自分でもそれはわかってると言いたいようだ。 「勿論、事実だけを取り出して解決できるものではないでしょう。 ですが時にはそういう考え方をしてもいいと思いますよ」 何も進まず、戻りもせず。 立ち止まってるだけならいっそのこと。 白馬の考えは珍しく確率論では計れない提案だった。 だがこんなに思いつめるくらいならそうしたほうが良いと思うのだ。 暫くの無言の後、恐る恐るという言葉が当てはまるような 戸惑いを秘めた目で平次がこちらを見る。 「……それでええんやろか」 「”僕”は良いと思うから言いました。しかし君がどう判断するかは自由ですよ。 どの判断にしろ君は間違いではない」 周囲の状況が彼を「罪」にしようとする。 それを乗越えて考えて欲しい。 白馬はそう強く願う。 彼のこんな顔はあまり見たくない。 「そうか」 白馬の願いは届いたのだろうか。 短く返事をしたまま再び平次は目を下方のカップに下ろした。 そのまま黙って2人はティータイムを過ごした。 平次が蘭と由布院へ行く、1週間前のことだった。